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町家リノべーションの留意点 (1)

町家を明るく開放的な空間に改装する為に壁や柱を撤去する事がありますが、地震時の安全性はどう確保すれば良いのでしょうか。

町家リノベーション後の1階オープンプランの空間。自然採光と坪庭の眺め

よくある構造部位の撤去

既存の台所と隣接する和室を仕切る壁はたいてい撤去されます。 明るく開放的な空間をつくるためには、そのほかの小壁や袖壁も併せて撤去されることがあります。

これらの壁は地震の力に抵抗するものなので、地震時の安全性を考えると、設計に基づいた構造補強によって、地震への抵抗力(耐震性)を補う必要があります。

一戸建て、あるいは長屋であるかによって、異なる構造補強の方針を検討します。

リノベーション前の町家。解体工事中の写真

長屋の場合の構造補強

長屋の町家の場合は、次の点に留意します。


強くし過ぎない

意外に思われるかもしれませんが、耐震性能を上げる、つまり建物を硬くする場合(剛性を上げる、とも言います)に、同じ棟の他の住戸よりも際立って耐震性能を上げると、逆効果を生んでしまいます。同じ棟の住戸の構造は横方向につながっているので、硬い部位に地震の力が集中してしまい、また長屋全体として見た時、建物の剛性の分布に偏りができて大きな地震時に破壊的な捩れが生じやすくなるからです。長屋の場合は、他の住戸も含めた長屋全体の構造補強は通常難しいため、耐震性能については、想定される創建当時ぐらいのそれを確保しながらも、主眼は倒壊を防ぐ補強とします。


倒壊を防ぐ

地震時の安全といっても、建物の損傷を防ぐ耐震性だけではありません。人命の保護や避難の確保には倒壊を防ぐことが肝要です。様々な金物を柱や梁の仕口や継ぎ手(木材を彫り加工して組み合わた接合部)に取付けて、接合部の乖離を防止します。この際、仕口が地震力を受けてある程度変形できるように取付ける事が重要です。 さらに、既存の伝統構法を踏襲して建物を基礎に緊結しないことが挙げられます。伝統的な木造構造は、基礎石の上に載せられているだけで、やや免震にも似た性格の基礎です。地震時に各柱脚がバラバラに動かないよう、高さを下げた水平材(根がらみ)や土台でつなぎます。この長屋向けの構造補強をYAの3Rハウス束ね柱の家で実施しています。

長屋の町家リノベーション現場。各柱脚は土台に乗せられ水平方向に繋ぐ。土台は基礎に固定しない。

一戸建ての場合の構造補強

この場合、2つの方針が可能です。


まず上述の長屋向けの構造補強方針が、部分的な改修やあまり手を加えないリノベーションには適していると言えます。比較的費用と手間を抑えられます。


もう一つの方針は、現代の木造住宅のように建物全体の剛性を高めて(硬くして)、コンクリート基礎に緊結するというものです。高い耐力の合板壁、厚い床合板などで堅めた水平床面、隅部の火打ち、筋交い、制震ダンパー、その他様々な補強金物を設置します。この補強方針は、全面的な改修、フル・リノベーション向きです。この事例としては、YAのカテドラル廊下の家があります。

町家リノベーション現場。柱脚は土台に乗せて新しい基礎にアンカーで緊結。

戸建て町家リノベーション現場。合板耐力壁で耐震補強。

構造補強はバランスが命

いずれの場合も、大地震時に建物が危険な動きをせぬよう、建物構造全体に、バランスよく耐震要素を配置することが重要です。また、予算、意匠性、そのほか要件とのバランスを図る上では、リノベーションのデザインに構造補強を組み入れることが必要になります。


一戸建ての場合、コンピュータ上で耐震診断とシミュレーションを繰り返しながら調整し、構造補強の設計と建築デザイン(意匠設計)と一体化して進めることが可能です。長屋の住戸の場合は、およそ想定できる創建当時の耐震性能は確保しつつ、主に倒壊を防ぐ補強を設計することになります。

まとめ

伝統的な町家の壁・柱を撤去して明るく開放的な間取りの空間をつくることは可能ですが、地震時の安全性を確保するには適切に設計された構造補強が必要です。


長屋か一戸建てか、町家の形式によって、構造補強の方針は変わってきます。


いずれの場合も、構造補強の設計は構造全体に耐震要素をバランスよく配置することが、安全性の面だけでなく経済性や意匠性との兼ね合いからも重要となります。


構造補強の設計を、意匠設計と一体してすすめることが、意匠性、経済性、安全性のバランスが取れたリノベーションには不可欠です。


参考資料

  • Japan Structural Consultants Association Kansai Chapter. 2014. 京町家の限界耐力計算による耐震設計及び耐震診断・耐震改修指針(増補版)[Seismic Resistance Design, Diagnosis, and Retrofit Principles Based on Limit Strength Calculation Method (Revised Edition)]. Kyoto: Kyoto City Planning Department


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